朝日新聞デジタル (2019年9月25日).
まず、装具療法を開始するのはカーブの角度が25度前後です。ただ、年齢や骨成熟度によって異なりますので注意が必要です。骨成熟が進んでいる場合は、25度の側弯でも装具をしない場合があります。 装具療法を行っても側弯が進行する場合や側弯が見つかった時にすでに装具が無効なほど重度のカーブになっている時に手術が適応となります。 装具でじっくりと治療する場合もありますが、装具が無効だと分かった場合、悪化する前に手術する場合もあります。 装具の効果についてお尋ねします。装具をつけていれば100%、側弯の進行は防げるのでしょうか? 脊椎側弯症に関して、医師の指示通りに装具治療を行えば、側弯を改善、進行を予防、進行の速度を緩めることができる可能性があります。 しかし、なかには装具療法をしっかりと行っても、曲がっていこうとする力が非常に強いため側弯が進行する場合があります。 その場合は、手術を考慮しなければならない場合もあります。 手術方法はどのようなものになりますか? 側弯の種類、弯曲によっても異なりますが、前方からと後方からの2種類のアプローチ方法があります。 前方法は肋骨を切ったり、おなかを切ったりして脊椎に到達する方法です。 後方法は背中をまっすぐに切って、脊椎に到達する方法です。一般的に胸椎のカーブは後方より手術するケースが多いようです。 スクリューを設置して矯正したり、またフック、あるいはワイヤーを用いて脊椎を矯正します。 使う金属の素材はチタンやステンレス製です。矯正した後は、骨盤から採取した自分の骨を移植して、その位置で骨をくっつけます。 肋骨の出っ張りが著しい場合は、肋骨を何本か切除することがあります。 手術後の経過についてお尋ねします。日常生活への制限はございますか? (※ 施設により、多少差異があるかと思いますが、私が入院した慶應大学病院での術後経過となります。) 人それぞれ個人差はありますが、術後は2-3日目より起立歩行を開始し、約2週間程度で退院となります。術後1カ月間は安静期間と言われております。 手術によって体力が落ちているので家の中でゆっくりしたり、お家の回りを散歩したり、日常生活に戻るための体力を養います。 1カ月を過ぎた頃より、体に負担をかけない程度に社会復帰をすることができ、その後、3カ月目までは装具をつけての日常生活となります。 術後半年した時点から体育などの簡単な運動は可能です。スポーツへの完全な復帰は術後1年を迎えてからです。 術後の定期検診にて骨が大方ついたことが確認されれば大概のことは普通の人と同じように制限なく行動できます。 慶応義塾大学整形外科医師のご協力の基に作成いたしました。 ご協力いただいた先生方ありがとうございます。 この場をお借りして感謝の言葉とさせていただきます。
現時点で手術以外に、側弯症治療に有効であると科学的に証明されている治療は「装具療法」以外にはありません。 側弯症を疑ったら、まずは専門機関の受診をおすすめします。 脊椎側弯症は自然治癒しますか? 構築性側弯症であれば、加療により改善する可能性はありますが、自然治癒する可能性は極めて低いと考えられています。 機能性側弯症(Q2参照)であるならば、自然治癒する可能性は高いと考えられます。しかし、構築性側弯症でも、一部の乳幼児側弯症、学童期側弯症の場合、経過観察をしているうちにカーブが小さくなっていくことがあります。 ただ、いまのところそれを予知する方法はありません。医療機関における定期的なレントゲンによる経過観察が必要です。 成長が終わったあとも、側弯症は進行しますか? 側弯症が一番悪化する時期は、成長期です。そのため、特殊な原因による側弯症(神経線維腫症、神経・筋性側弯症など)を除けば、一般に、成長が終了すれば側弯は進行しません。 しかし、高度な弯曲を有するものでは、成長終了後も少しずつ進行するとされていますので、定期的なレントゲンによる経過観察が必要です。 側弯症は遺伝しますか? 現在では多くの疾患に遺伝子の異常が関与していることが分かってきています。 側弯症においても、最近では遺伝子関与の報告が散見されますが、まだはっきりとした遺伝子や発症形式は分かっておりません。 経過観察期間中、定期的にX線を浴びることになりますが、X線の被爆の問題、身体への影響はありますか? 放射線はある一定の被爆量を超えると人体にとって有害なものであると考えられています。それにも関わらず、放射線を積極的に利用しようとするのは、人体に対する有害な影響よりも放射線を利用することによって得られる利益が大きいからです。 個人レベルの障害として考えた場合、慢性的な障害として発がんの可能性があるという問題が挙げられます。 しかし、日常的に放射線は自然界にも存在し、大地から1年間に0. 46mSv(ミリシーベルト)また、宇宙からの放射線(宇宙線)で1年間に0. 38mSv程の被爆を受けます。 また、よく飛行機に乗られる方は地上の数倍の宇宙線を浴びる事になります。 側弯症のレントゲン撮影には約0. 5~1mSvの線量を必要とします。 放射線を一度に全身に受けた場合、障害が現れる可能性があるのは約250mSv以上の被爆量です。 側弯症の外来で一度に250枚以上のレントゲンを撮ることはありません。 それよりもレントゲンは側弯の進行の度合いなど、治療のための有用な情報を与えてくれます。 レントゲンによる被爆の影響を患者さんが心配する必要はほとんどありません。 経過観察期間についてお尋ねします。例えば、進行性の側弯症か、装具治療の必要があるか、それとも手術をした方がいいかどうかを判断するための観察期間はどのくらいが適当でしょうか?